第9回恵比寿映像祭&TPAM2017


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2月10日に東京都写真美術館で開幕した第9回恵比寿映像祭、続けて開幕したTPAM(国際舞台芸術ミーティングin 横浜2017。中でも、映画/映像とダンス/パフォーマンスの間に引かれていた境界線を軽々と飛び越える、新しい表現への挑戦に注目したい。

TPAMでは、タイを代表する映画監督、アピチャッポンウィーラーセタクンによる『フィーバー・ルーム』が日本で初上演される。これまで映画・映像作品で全身に絡みつくアジアの湿度を観客の身体に刻み、精霊のような「何か」を画面の背後に潜ませていたアピチャッポンが、今度は“劇場”を舞台にどんな夢をみせてくれるのだろうか。

 

 

TPAMフリンジでは七里圭の“音から作る映画のパフォーマンス上映”が3日間にわたり開催される。2016年に物語を音と気配で綴るかのような『ねむり姫』(2007)の5.1サラウンド&デジタルリマスター版が公開され、また近年はアークスモニウム上映も大好評を博している七里圭の「音から作る映画」シリーズ最新作の世界初初演。『サロメの娘/パフォーマンス』では、マルチプロジェクションとパフォーマンスによるライブ上演で、映し出されるイリュージョンとしての映像と、そこに生々しく存在する踊る身体の対比と融合を目撃したい。

恵比寿映像祭では、上映プログラム「ダンスのマルチプルな未来」が上映される。ヨーロッパを中心に活躍するダンス研究者の中島那奈子氏がゲストプログラマーを務めた本プログラムでは、踊る身体を捉える映像の限界と可能性、そして越境する身体のアイデンティティに問いを投げかけている。“私は、私自身の身体に向き合わなくてはいけない…”。『似ていること』のクレア・カニングハムが先日語った言葉の意味を考えさせられる上映作品群。人種、国籍、文化、ジェンダー、障がいなどのアイデンティティを映し出した“身体”はまた、展示されている3Dのオープンエンデッドグループ&ビル・T・ジョーンズの作品では逆にモーションキャプチャーによって黒人の“肉体”を剥奪し、踊る骨格としての人類の共通性と固有性をあぶり出す。

恵比寿映像祭「ダンスのマルチプルな未来」のゲストプログラマーを務めたダンス研究者・ダンスドラマトゥルグの中島那奈子氏に、各上映作品について解説をしていただいた。

 

上映プログラム「ダンスのマルチプルな未来」

1、メグ・スチュアート、ピエール・クーリブフ《サムウェア・イン・ビトゥイーン》2005/55分
現在、ヨーロッパで最も活躍するアメリカ人振付家の一人メグ・スチュアート。言葉や舞台作品を使わずに「映画と振付の間を模索」し、スチュアート自身の動きも「壊れていく」。映像作家ピエール・クーリブフの実験的なフィルム・ ポートレート。

2、クレア・カニングハム、デール・コーレット《似ていること》2014/3分10秒
自身の歩行にも使う松葉杖を兵士が銃を扱うように集めバラしていく。2017年2月4−5日にKAATで来日公演も行った英国グラスゴーのクレア・カニングハムが、適切で均一な身体とは異なる「ダンス」する身体とは何かを問いかける。

3、ロニ・アズガド、バットシェバ舞踊団《ザ・ホール》2013/1分7秒
現在世界最高峰ともいえるダンサーの質を誇るイスラエルのバットシェバ舞踊団が作った舞台作品「The Hole」のトレイラー。監督は、バットシェバとの仕事が評価されイスラエル美術館に映像が収録されている女性映像作家ロニ・アズガド。

4、アディ・ハルフィン、バットシェバ・ヤング・アンサンブル《ホームアローン》2013/1分43秒
バットシェバ舞踊団の若手メンバーを、映像作家のアディ・ハルフィンが撮影したダンス・フィルム作品。きれきれのダンサーたちが、乾いて崩れかけた廃墟の中で、壁さえも通り抜けてしまう子供のようにのびのびと踊る。柿崎麻莉子も出演。

5、ミン・ウォン《コンタクトホープ》2010/22分
振付家ピナバウシュの舞台作品「コンタクトホーフ」は、カンパニー版以外にも、65歳以上版、ティーンエイジャー版があり、オリジナルに負けず面白い。この作品はバウシュ作品を基にしたベルリン拠点のアーティスト、ミン・ウォンによる映像作品。彼をとりまくベルリンアートコミュニティの人々が、「真正性」や「オリジナリティ」の歪みをユーモラスに暴いていく。

6、ハリル・アルティンドレ《ホームランド》2016/10分
爆撃後のアレッポ市街の様子や、シリアからの難民がベルリンになだれ込む様子がドローン撮影され、ファッショナブルでユーモラスにまとめられている。イスタンブールを拠点に世界の国際展で活躍中のアルティンドレを日本初紹介。本作は第9回ベルリンビエンナーレで発表された。

7、マリ・ラツェル、アードリアン・キュンツェル《煙に覆われた戦士》2014/2分53秒
荒野で布をまとったダンサーがカメラと戯れ、ファッションを見せるための身体の動きが織りなすダンスビデオ。ベルリン拠点の舞踏家・可世木祐子も出演している。ファッションブランドMADS DINESENがコミッションした本作は、ダンスフィルムフェスティバルを中心に数々の賞を受賞。

展示作品『アフターゴーストキャッチング』(2010)
振付家マース・カニングハムとの作品でも有名な2人のアメリカ人デジタルアーティスト集団オープンエンデットグループによる作品。伝説的な振付家ビル・T・ジョーンズをモーションキャプチャーしたビデオ作品ゴーストキャッチング(1999)を、10年後に新たな3Dバージョンにしたもの。1952年フロリダ生まれのジョーンズは、HIVポジティブやゲイ、アフリカ系アメリカ人であることをテーマにした作品を多く作る。ダンスにおける人種の問題が、動きを抽象化する試みと共に浮かび上がり、アメリカ民謡を歌いながら、継母に殺され父親に食べられる息子の話をつぶやきながら踊るダンサーは、 身体から解放された幽霊のように永遠に踊り続ける。

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第9回恵比寿映像祭「マルチプルな未来」
開催期間:2017年2月10日(月)〜26日(日)*月曜休館
会場:東京都写真美術館 ほか
上映プログラム「ダンスのマルチプルな未来」
上映日:2/11(土・祝) 11:30 *中島那奈子氏によるアフタートークあり
2/14(火) 15:00
2/22(水) 18:30
料金やスケジュール等、詳細は公式ウェブサイトをご覧ください。
www.yebizo.com

国際舞台芸術ミーティングin横浜2017
開催期間:2017年2月11日(土)〜2月19日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 ほか
料金やスケジュール等、詳細は公式ウェブサイトをご覧ください。
www.tpam.or.jp

 

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